アイランドコニシ
「騒音」とじょうずにつき合う法
1日の仕事を終えてプライヴェートな時間を楽しもうと思っても、周囲の「ソーオン」 がどうにも気になってしまうという経験は誰にでもあるものです。ここで「ソーオン」と カタカナで書いて、漢字で書かなかったのは、ひとくちに「ソーオン」といっても、2種類 の「ソーオン」があるからです。
ひとつは一般に「噪音」と書かれるもので、「楽音」の反対語。この「楽音」が普通の楽器 の音のように規則正しく、一定の周期をもった振動が継続する音であるのに対して、 「噪音」は不規則な振動や雑多な種類の振動が同時に起こる場合の音のこと。最近では 「非楽音」と呼ばれることもあります。
「噪音」の代表的なものにFMチューナーの局間で聞かれる「サーツ」というホワイト・ ノイズがありますが、これは人の耳に聞こえる範囲内のあらゆる周波数の音が同時に鳴っ て、しかもそれぞれが同じ強さで聞こえている時の音です。あらゆる周波数の光が同じ強 さでまじると白い光になるのをもじって、こういう名前がつけられたのです。 もうひとつのほうの「ソーオン」は「騒音」と書かれるもので、いってみれば個人的に「好 ましくない音」。これと「楽音」の違いは、相対的なもので、実際にはどちらに属するのか 分からない場合も少なくありません。
ある人にとっては「楽音」であっても、他の人にとっては「騒音」であることもしばし ば起こります。つまり、近隣住民の生活を妨害したり、作業能率を低下させるような音が 「騒音」で、強烈であったり、不快であったりする音と考えることができます。極端な話、 演奏家が奏でる妙なる音楽も、人によっては「騒音」と受け止められてしまうわけで、非常 に微妙な問題を含んでいて、始末におえません。
幸い人の感覚器官は、周囲の刺激に関して馴化する働きを持っているので、最初は「騒 音」に思えていても、いつのまにか気にならなくなるものです。しかし、ゆっくりくつろ ぎたいような時にかぎって、「騒音」が気になり始めるのも事実。また、いったん気になり だすと、そちらのほうばかりに注意が向かうことも少なくありません。 そんな時には音楽の助けを借りて、もう一度ゆったりした気分をとり戻すのがいちばん。 美しい音楽を耳にすると、しだいに気持ちがリラックスしてきて、いつのまにか「騒音」 も気にならなくなってくるはず。また、ヘッドフォンなどを利用すれぱ、音の侵入を防ぐ マスキング効果も期待できます。
音楽を聴いて心を静めるコツは、いきなりリラックスできる音楽を聴くのではなく、ま ずはその時の気分や精神状態に合った音楽を聴くこと。つまり、イライラした気持ちでい る時にはあえてイライラに同調する音楽を、憂鬱な気分の時はメランコリックな音楽を、 まず耳にしてみるわけです。そのうえで、今度は精神を安定させ、リラックスさせる音楽 を聴くというステップを踏みます。こうしたほうが、いきなりリラックスできる音楽を聴 くよりも、心を安定させる効果が大きいのです。
音楽の「楽」は、楽しいの「楽」でもあります。紀元前7世紀頃の中国古代の詩を編纂 した『詩経』という書物にはすでにこの2通りの意味が、「楽」という文字にあてられてい て、他にも「病気などを治す」という意味でも用いられているそうです。こうしたことか ら、「楽」という文字は「憂いのない状態」「こころが癒された状態」を表しているものと 考えられます。したがって、当時の人々にとって音楽は魂の生命力を回復させる手段のひと つに他なりませんでした。
これは最近注目されている「音楽療法」や「サウンド・ヘルス」の考え方とよく似ていま す。つまり、いずれの場合も、精神や肉体の活力を取り戻すのに、音楽を聴いたり、演奏 するのが大いに役立つと考えているのです。風、光、気温、地球の自転など、自然界の 現象を観察すると、そこには常に微妙な変化や動きが生じていますが、こうした変化のこ とを「ゆらぎ」といいます。
同じように人間の体内にも、微妙なゆらぎが生じていて、脈拍や脳波、呼吸などのリズ ムも微妙に変化しています。
こうしたゆらぎを分析し、パワーと周波数の関係で表すと次の3タイプに分類できるこ とがわかりました。
●1/f°ゆらぎ
ピアノをでたらめに叩いたような状態に近いゆらぎ。
●1/fゆらぎ
生体が保有している体内固有のリズム。意外性と期待性を適度に合わせ持つ。
●1/f2ゆらぎ
次に何がくるのか予想しやすく、退屈してしまう。
1/f°ゆらぎは危険を知らせるものであり、1/f2ゆらぎは安全を知らせるものと考える こともできます。その中間に位置する1/fゆらぎは、両者の特性をあわせもち、適度な緊 張と安定をもたらし、人間にとっても心地よい影響を与えます。もっと具体的にいうと、 目や耳から入ってくる情報が1/fゆらぎになると、脳波はα波になり、瞑想状態にある時の 脳の状態に近づくのです。クラシックの名曲と呼ばれる作品のほとんどは、この1/fゆら ぎを持っていて、心に快楽をもたらしてくれるのです。
実際、適切な音楽を聴くことによって、血圧が下がったり、脈拍、呼吸が安定してくる という実験も行われています。一日の疲れを取り除き、ストレスを解消するために、この 音楽の持つ効果を利用しない手はありません。
音楽をストレス解消に利用する時の原則は、まずはその時の気分や精神状態に合った音楽 を聴くことだそうです。つまり、イライラした気持ちでいる時には、あえてイライラに同 調する音楽をまず耳にしてみるわけです。そのうえで、今度は精神を安定させ、リラック スさせる音楽を聴くというステップを踏むのです。こうしたほうが、いきなりリラックス できる音楽を聴くよりも、心を安定させる効果が大。ただし、現在の気分に同調する音楽 は1曲程度にとどめ、あまり長く聴かないようにします。